この春、朝日新聞教育面では「親が振り返る中学受験」、朝日新聞デジタルでは「サクラ ハラハラ 親が振り返る中学受験」(http://t.asahi.com/wo23)と題した連載企画で、中学受験で不合格や撤退を経験した親子を紹介しました。中学受験にどう向き合ったらいいのか。記事に登場する保護者2人も参加して、取材した大阪社会部教育担当の丘文奈記者が大手進学塾・浜学園の松本茂学園長に話(抄録)を聞きました。
丘 中学受験は親の受験とも言われます。不合格とか撤退を経験して親御さんは悩んだり苦しんだりするのですが、一方で、お子さんは新たな環境で勉強に励んだり、夢を見つけたり、たくましく成長していく様子を取材しました。
保護者A 長男が第1志望と第2志望の学校に落ち、第3志望なんですが、進学しました。私は毎日泣いて、ご飯も食べられず。息子は無遅刻無欠席で1年を過ごし、いま中学2年生ですけど、テストもずっとクラスで1番をキープしています。英検も受けたいと言って。
私は息子につらい思いをさせたと後悔でいっぱいでしたが、息子は自分の力で、努力して前向きに取り組んでいる姿を見て今は本当に良かったと思います。本当にご縁のあった学校だったんだなあと。中学に行って友だちができて、慣れたのかな。楽しいと思えることが一つずつ増えていったのかな。
松本 子どもは思っている以上に親の顔を見ています。
保護者A 第2志望、第3志望でも、前向きに通うための動機付けをしてあげるために、情報収集をしておくことがすごい大事かなと。
松本 うまくいかなかった時のシミュレーションを、ここの学校なら実力的にも大丈夫というのを一つ必ず持った上でのチャレンジですね。そうやってシミュレーションをしてお父さん、お母さんがどっしりと構えて受験するとね、顔色を見て後悔とか反省とかじゃなくて、自分の反省をするようになると思うんです。
それから、いい加減な感じで受験勉強してきた男の子の話をします。入試に失敗して帰ってきました。入試で、漢字を書き直したんや、と。先生にもお母さんにも漢字の練習をしろってずっと言われてきたのにせんかった。自分に自信が持てず、正しい漢字を書けていたのに、僕、消してしもた、と。最近の学校は点数を教えてくれるところもありますから、そこは教えてくれる学校でした。
それで、(合格には)漢字一問足らんかったと。これを聞いて正直、これでこの子にとっては中学受験の価値があったと思いました。この子は次にチャレンジするときには努力できる子になる。中学受験は成功だったんです。これはきっと保護者の方もちゃんと前を向いていたからだと思うんですね。
自分を反省できる状態になれば、中学受験で第1志望でなくても、その後に伸びてくれるチャンスを与えてくれる。そう思いながら塾の教壇に立っています。
保護者A 本当に親がどっしり構えてというか。本当に本当に中学受験は通過点でしかないっていうのが、息子のときに思いました。
司会 それではもう1人。
丘 娘さんが小6の夏に中学受験をやめたという経験の持ち主です。
保護者B 私自身が中学受験した経験があり、良かったよと話す中で、娘もやってみると。
丘 最終的に家族で話し合いをされたという風に取材では記憶しています。
保護者B 自分からやりたいと言ってスタートしたので。ただ、なかなか自分の口から言えなかったですね。今は公立の中学校の3年生です。演劇部に入っています。自分を変えたいって欲望がすごいって話してくれます。
中学受験をやめると、自分で選ぶことができていなければ。いまは演劇部とか、やりたいことがいっぱいありすぎるというので、すごい幸せだと思うんですよね。そういう風に変われたのも、中学受験で主体性を持って生きるということを体感できたからつながっていると感じます。
松本 お母さん、すごいなと。子どもは親の顔色をうかがっているし、これを言える環境を作られた。
この6年生の夏の時期にね、保護者に家族会議を開きませんかと提案しています。ちょっと厳粛な雰囲気で。先を考えて、こうなったらこうしようとか。やめるというのも選択肢の一つであってほしいんです。もしやめることを選んだら、何か受験勉強の代わりに何をするっていう話はぜひお願いしたい。
◇詳細は朝日新聞のポッドキャストでお聞きいただけます。
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